1995年12月7日木曜日

ガリレオ衛星から木星に投下された探査機


(注意:この記事は1995年12月7日にNASAからリリースされたものです)。
本日、アメリカ東部時間の午前5時頃、NASAの探査衛星ガリレオから切り離された探査機が人類史上初めて木星大気に突入します。突入する探査機は、今年の7月に木星の周りを周回しているオービターから切り離され4ヶ月ほどかけて徐々に木星へと近づいてきました。探査機は木星大気に突入するに際して、本の数分の間に、時速約16万キロメートルから時速約1600キロメートルまで減速します。この時に探査機に加わる重力は、地球表面の重力の実に230倍にも達します。木星の大気圏突入に成功すれば、その後探査機はパラシュートを広げ、ゆっくりと降下しながら木星の大気の組成を調べる予定となっています。この写真は打ち上げ前に地上で撮影された探査機(上側)とエアロシェルと呼ばれる大気突入用のモジュール(下側)です。実際には探査機とエアロシェルは接合された状態で木星大気に突入していきます。エアロシェルは木星大気突入時に探査機を振動と熱から守ります。大気圏突入開始時のエアロシェルの温度は、太陽表面の温度の約2倍にも達すると考えられています。
(執筆:2017/12/7)

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1995年12月6日水曜日

木星まであと24時間


NASAが開発したガリレオ探査衛星は約6年前に木星に向けての長い旅に出発しました(注:この写真がAPODでリリースされたのは1995年12月です)。そして、これからおよし24時間で目的地に到着します。1995年12月7日に予定通り木星に到着すると、ガリレオ衛星は木星の周回軌道に入り、軌道上から探査機を木星に投下するという、人類史上初めての探査に取り組むことになります。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたこの木星の写真には、ガリレオ衛星から探査機が投下される予定の場所が矢印で示されています。探査が成功すれば、投下された探査機から、木星大気の温度や化学組成などの情報が送られてきます。周回軌道を回る衛星は、探査機の投入の後も、およそ2年間木星の周りを回りながら観測を継続する予定となっています。ガリレオ衛星がもたらすであろう観測データによって、我々人類が持つ木星の知識が深まるだけでなく、太陽系の起源を探る上での重要なヒントも得られると考えられています。
(執筆:2017/12/7)

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1995年12月5日火曜日

楕円銀河の中心部分にある謎の渦巻き


ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された近傍の楕円銀河 NGC4261の写真には大変興味深い構造が映し出されています。この銀河の中心にはブラックホールがあると考えられていますが、この写真では、一見して銀河中心近くに漂うガスや塵が、渦を巻きながら銀河の中心部(ブラックホール)に吸い込まれているように見えます。しかし、実際は少し状況が違うようです。この渦巻状に見える構造、実は天文学者は、数億年前に楕円銀河に落ち込んだ小さな渦巻銀河の残骸だろうと考えています。このような銀河どうしの衝突や合体は、宇宙では頻繁に発生しており、活動銀河核のような活発な変動を見せる天体の成因と考えらています。NGC4261に埋没した渦巻銀河の位置は、楕円銀河の中心からずれています。このような位置関係が、上記のようなストーリーが背景にあることを推測するヒントを天文学者に与えたのでしょう。
(執筆:2017/12/7)

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1995年12月4日月曜日

褐色矮星の候補 GL229B


宇宙にはどのような種類の物質が一番多く存在するのでしょうか? この問は現代天文学を考える上で最も重要なものの一つで「暗黒物質の問題」と呼ばれています。その暗黒物質の候補の一つが「褐色矮星」と呼ばれる小さな星です。褐色矮星は、他のどのような種類の星の数よりも多く存在すると考えられていますが、非常に暗いために実際に検出することは容易ではありません。暗黒物質の問題を考える上で大変大きな意味を持つ写真が1994年に撮影されました。この写真には、非常に明るい星の傍らに、小さな暗い星が写っているのわかります(写真中央からやや右)。この星は、おそらく褐色矮星であろうと考えられています。現在、この星がどのような組成でできているのかが議論となっています。
(執筆:2017/12/6)

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1995年12月3日日曜日

M81で起こった超新星爆発が放つX線


M81と呼ばれる銀河の中で1993年に星が爆発しました。この爆発は、重い星がその一生の最後に起こす「超新星爆発」と呼ばれる種類の爆発です。このX線写真はASCAという装置によって撮影されたもので、超新星爆発によって撒き散らされた高温の物質が写っています(注:ASCAは、Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysicsの略)。M81は比較的近傍の銀河なので、爆発跡の様子を観測的に詳しく調べることができます。ASCAによるX線観測も爆発後に行われた詳細な観測的研究の一つです。X線は地球の大気で吸収されてしまうので地上から観測することはできません。したがって、この写真も宇宙空間から撮影されたものです。爆発跡から放射されるX線を詳しく解析することで、撒き散らされた物質の組成や温度を調べることができます。
(執筆:2017/12/6)

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1995年12月2日土曜日

スペースシャトルの下に見える稲光


1993年5月、スペースシャトル・コロンビア号はスペースラブのドイツ科学モジュール2号(SL-D2)とその接続用トンネルを携えて、軌道上を周回していました。この写真はその時の様子を捉えたものです。スペースシャトルの下には嵐で大荒れの地球が見えています。雨雲の中に数カ所の稲光が写っています。写真中央、スペースシャトルの尾翼の上あたりにも明るく稲光が写っていますがこの辺りはちょうどメキシコ・シティの上空にあたります。
(執筆:2017/12/5)

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1995年12月1日金曜日

ペガサス座51番星に見つかった系外惑星


私達人類は広大な宇宙の中で孤独な存在なのでしょうか?1995年の10月、人類はその問いに対する答えに一歩近づきました。二人の天文学者(マイケル・メイヤーとディディエ・ケロー)が、ペガサス座51番星に少なくとも1つの惑星が存在することを発見したのです。この写真中央に明るく写っているのがペガサス座51番星です。ただし、発見された惑星をこの写真で確認することはできません。惑星は、その重力による51番星の僅かな動きを検知することで存在が証明されました。これまで、太陽系以外で惑星が発見された例は少なく(注:2017年においては、数百個の系外惑星が確認されています)、惑星が見つかった場合でも、その惑星が中性子星であるなど、太陽系の状況とはかけ離れたものでした。しかし、このペガサス座51番星に発見された惑星の場合、51番星が太陽と似た星であるため、これまでとは異る意味合いを持ちます。51番星に発見された惑星は、恒星に近い軌道を公転する木星に似たタイプの惑星だと考えられており、その公転周期は4日ほどです。(写真の中に見える十字線は、観測装置によって人工的に作り出された光学パターンであって、実際の星の形を表すものではありません。)
(執筆:2017/12/3)

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