1995年11月30日木曜日

惑星状星雲の中心に横たわる超高温の星


この写真の中央に写っている星は、表面温度の最も高い星の一つとして知られています。この星は白色矮星と呼ばれる種類の星で、その表面温度は摂氏20万度以上にもおよびます。この温度は、太陽の表面温度の実に30倍以上にもなる高温です。このような超高温によってこの星は大変な明るさで輝いており、その明るさは太陽の250倍以上にも達します。この星は、NGC2440という惑星状星雲の中心に位置しています。この写真はハッブル宇宙望遠鏡によって撮影され、シャープな像を得るための特別の加工が施されています。
(執筆:2017/12/3)

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1995年11月29日水曜日

コンプトン衛星の軌道への投入


ノーベル賞物理学者のアーサー・コンプトン博士の名前を冠した「コンプトンγ線観測衛星(GCRO)」は、1991年4月にスペースシャトル・アトランティス号によって軌道に投入されました。コンプトン衛星の目的は、宇宙から飛来するγ線を探索することでした。この写真には、宇宙遊泳中に笑顔を浮かべるジェリー・ロス宇宙飛行士と、宇宙空間に浮かぶ巨大なコンプトン衛星が写っています。コンプトン衛星の軌道への投入作業では、本来宇宙遊泳を伴う作業は予定されていませんでしたが、衛星の通信用アンテナにトラブルが発生し、その修復のためにロス宇宙飛行士ならびにジェイ・アプト宇宙飛行士が宇宙遊泳を行いました。その後、コンプトン衛星の観測は順調に進み、γ線波長域における初めての掃天観測によって、太陽、クエーサー、パルサー、超新星、ブラックホール、γ線バースト天体などについて多くの新発見がもたらされました。
(執筆:2017/12/2)

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1995年11月28日火曜日

月の南極に見える黒い影


1994年に、フランスの月探査衛星「クレマンティン」は、70日間をかけて月の表面を詳細に観測し月表面の地図を作成しました。上の写真に写っているのは、クレマンティンが撮影した月表面の写真 1500枚をつなぎ合わせて作成した月の南極側の様子です(画像の中心が月の南極です)。この写真に写っている月の上側半分が通常地球から見える月で、下側半分は地球からは見えない部分です(月は常に同じ面を地球に向けて地球の周りを公転しています)。月の南極近辺(画像中央)に大きな凹みがあることが画像からわかります。これは彗星もしくは小惑星が衝突した跡だろうと推測されています。衝突痕と推測される場所には黒く影になった領域が見えます。この影の部分の温度は非常に低く、衝突したかもしれない彗星の氷の破片などが溶けずに残っているのではないかと天文学者は期待しています。
(執筆:2017/12/2)

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1995年11月27日月曜日

ブラックホール越しに見た星空


ブラックホール越しに景色を眺めるとどのように見えるのでしょうか?今日はその疑問に答えてくれる画像を紹介します。上の2枚の画像は、重力の理論に基づいてコンピュータで作成されたシミュレーション画像です。左側の画像はオリオン座近辺の星空の様子を示しています。画像の中央からやや右寄りに、オリオンの三つ星が並んでいるの分かると思います。右側の画像も同じ星空を表していますが、違うのは星空の手前にブラックホールが配置されていることです。ブラックホールの周りではその強い重力の影響で光の軌道が歪められます。このことから、背景となる星空も左の画像に比べて大きく歪んでいます。右の画像には奇妙な点がいくつも見られます。まず、左の画像に見えていた星の多くが、右の画像では2つの星に分裂しています。分裂した星はブラックホールを挟んで両側に見えています。これはブラックホールの強い重力によって星の光が二手に別れてしまうために起こる現象です。また、この画像では分かりにくいですが、理論的にはブラックホールの直近では、実は全天のすべての星が見えています。あらゆる方向からきた光がブラックホールの重力に絡め取られ、ブラックホールの周りを光が軌道運動することからこのような現象が起こります。ブラックホールは物質の密度が高くなった極限の状態であると考えられています。現時点ではまだブラックホールの直接の検出は行われていませんが、連星系、球状星団の中心領域、銀河の中心領域などからブラックホールの存在を示唆する間接的な証拠が多数見つかっています。
(執筆:2017/11/30)

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1995年11月26日日曜日

光子球からみた景色


この画像は、非常にコンパクトな重い天体の近傍から星空を見上げるとどのように見えるかを理論計算に基づいて再現したものです。ここで仮定されているコンパクトな天体は、ブラックホールになるかどうかのギリギリの大きさと質量を持ちます(このような天体は実際には知られていないので、この画像はあくまで理論上の計算結果です)。この理論計算では、観測者は重力の影響で光(光子)が軌道運動して形成される球(光子球)にいるものと仮定されています。重力の影響でどのように景色が歪められるかをわかりやすく見るために、天体の表面には地球の地図、夜空には地球から見える星空が描かれています。画像をよく見ると、球体の一部から空を見ているはずなのに、球体(地球)の表面全体が見えていること、星空も通常見える範囲を超えて、ほぼ全天が一度に見えていることなど、強い重力によって奇妙な現象が起きていることがわかります。
(執筆:2017/11/30)

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1995年11月25日土曜日

最もクリーンな土星の衛星 エンケラドゥス


エンケラドゥスは土星の第2衛星で、ミマスとテティスの間の軌道を公転しています。エンケラドゥスを構成する成分は主に固体の水(氷)で、その表面は太陽系の惑星・衛星の中で、もっとも純度の高い氷で覆われていると考えられています。エンケラドゥスの表面は氷ですっぽり覆われているため、可視光域の観察では白っぽく見えます。また表面には、クレーターは比較的少なく、特徴的な起伏が見られます(エンケラドゥスの表面の状況は、木星の衛星であるガニメデの表面と似ていると言われています)。このような特徴から、エンケラドゥスの表面は比較的最近、火山活動によって再形成されたのだろうと推測されています。エンケラドゥスは、1789年にウィリアム・ハーシェルによって発見されました。
(執筆:2017/11/30)

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1995年11月24日金曜日

土星の第3衛星 テティス


テティスは土星の衛星の中でも比較的大きく土星に近い軌道を周っています。テティスは、ボイジャー衛星1号と2号の両方で直接探査が行われました(ボイジャー1号による探査は1980年に、ボイジャー2号による探査は1981年に行われました)。テティスを構成する成分はほとんどが氷(固体の水)であることが知られています。テティスには直径がテティス自身の直径にも匹敵するような非常に大きなクレーターがあることが知られています(注:この写真には写っていないようです)。このような大きなクレーターが存在するにも関わらずテティスが今の状態で存在していることから、クレーターができた当時にはまだ完全にテティスは固まっておらず温度の高い柔らかな状態であったのだろうと考えられています。テティスの周りには、テレストとカリプソという2つの衛星が存在し、2つはほぼ同じ軌道を周回しています。テティスは1684年にジョヴァンニ・カッシーニによって発見されました。
(執筆:2017/11/29)

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