1996年2月1日木曜日

バーデの窓と重力レンズ


「私たちの天の川銀河はどのような形をしているのだろうか? そして、どのような物質で構成されているのだろうか?」これは長年世界の天文学者が追い求めている問題です。このような問いに答えるために天の川銀河を詳しく調べようとするとき、星間空間に漂う塵やガスは観測を阻害する邪魔な存在となります。1940年代に、ウォルター・バードという天文学者は、天の川銀河の中心方向に、塵等による吸収が局所的に少なくなっている領域を発見しました。現在この領域は発見者の名前を関して「バーデの窓」と呼ばれています。この領域を通して、何百万という数の遠方の星を、星間ダストや星間ガスの影響を受けずに観測することができます。理論宇宙物理学者であるボフダン・パチンスキは、バーデの窓を通して、重力レンズ効果による星の増光を監視することを提案しました。重力レンズ効果の発生頻度を調べると、天の川銀河の構造について様々な情報を得ることができます。実際に行われた重力レンズ現象のモニター観測では、予想外に多くのイベントが検出されました。この結果は、銀河中心から始まり我々の太陽系の近傍を通ってさらに外側に伸びる「バー構造」の存在を示唆しています。
(執筆:2019/8/19)

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