1996年1月17日水曜日

死にゆく星が形作る星雲 NGC7027


ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたこの天体(NGC7027)は、太陽程度の質量の恒星が星としての寿命を終える時に星周空間に吹き出した物質によって作られる「惑星状星雲」と呼ばれるタイプの星雲です。惑星状星雲の形状から、星がその進化末期にどのように物質を星間空間に吹き出したのかを知ることができます。星雲の外側の方が、より昔に吹き出された物質に相当しますが、NGC7027の場合、星雲の外側は比較的きれいな円形になっています。これは、惑星状星雲が形成され始めた初期の段階では、物質は球対称に全方向に向かって均一に吹き出されていたことを示唆しています。そして星雲の内側、つまり、より後になって形成された部分ほど複雑な形状を示しており、星の進化の最末期には物質の吹き出し方が球対称から非球対称へと変化していることが分かります。星からガスや塵が吹き出すことは「質量放出」と呼ばれますが、質量放出が球対称から非球対称へと変化する理由は今もって完全には理解されておらず、恒星物理学に残された難問の一つとして知られています。太陽程度の質量を持った星の寿命は100億年程度ですが、質量放出期に入ってからの星の寿命は僅かに数千年から数万年程度しかありません。しかし、この短い期間に星は劇的な変化をとげるのです。我々の太陽も50億年後にはこのような進化の最終段階を迎えると考えられています。
(執筆:2019/7/28)

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